創薬プロジェクト

創薬プロジェクトイメージ

創薬と
落合式ハイプレッシャー法

Q

大豆を中心に研究されている大豆エナジーが創薬プロジェクトを始められたということは大豆から薬ができると考えたのでしょうか。

A

大きく言えばその通りです。まず当社が独自に開発したプロモーターボックス装置を使います。この装置では発芽中の種子に対して酸素、二酸化炭素、温度、水分などを変動させて条件の異なるストレス刺激を人為的に与えます。
ストレス刺激を与えられた発芽中の大豆では、イソフラボンの一種であるダイゼインが急増します。
我々は、同時に植物の生体防御物質の産生を誘導する外的要因であるエリシターの研究を進めていますが、これを第二の外部刺激として投与します。エリシターにはテンペ菌、乳酸菌、麹菌など安全性が確認されたものを使用しています。
第一刺激と第二刺激を加えられた発芽中の大豆は、遺伝子や酵素の活性が向上して産生したダイゼインを猛スピードで代謝させていきます。第一刺激では「代謝亢進」を第二刺激では「代謝異常」を狙っています。この結果、ダイゼイン骨格をもった膨大な新規代謝物が産生されます。ダイゼイン骨格という一つの共通項を持ちながら、限りなく多様に顕現していました。
代謝物の特長として低分子でプレニル基など疎水基をもっていることがあげられます。

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得られた代謝物の測定(メタボローム解析)は京都大学大学院農学研究科食品分子機能学分野と共同研究をすすめています。 京都大学ではオービトラップを利用して分子量を小数点以下まで測定していますが、なんと約2,000種類の代謝物が発見されています。 この代謝物はフィトアレキシンと呼ばれる二次代謝物群です。

今後は得られた2,000種近くの新規物質の機能性を測定する必要がありますが、プレ試験では我々が先に抽出したグリセオリン(Ⅰ~Ⅴ)というダイゼインの二次代謝物質を公益財団法人がん研究会で再発性乳がん細胞に添加し培養することで同がん細胞の増殖が抑制されることが既に判明しました。

Q

フィトアレキシンの説明をお願いします。

A

大豆のイソフラボン、葡萄のポリフェノール、トマトのリコピン、お茶のカテキンなどフィトケミカルと呼ばれるものは、植物の防御物質として有名ですが、フィトアレキシンは、外敵からのストレスが加わり様々な遺伝子と酵素が活性化した結果、生合成が促進されて出来る低分子化合物のことです。植物の免疫応答物質として強い生理活性があることで知られていますが、従来の技術では植物に存在することは確認できても、実際に採取することは困難で創薬への応用研究が進展しませんでした。
私たちはこの植物の素晴らしい免疫応答能力に注目し、世界に先駆けてフィトアレキシンを多種多様にしかも大量に植物に作らせる方法を見出しました。植物に創りだされたフィトアレキシンの分子構造は低分子創薬研究で求められる条件を備えており、次々に創薬シード化合物を創出できるのではないかと考えています。

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Q

ネイチャー姉妹誌『Scientific Reports』に掲載されましたね。

A

そうです。我々と公益財団法人がん研究会がん研究所との共同研究で、落合式ハイプレッシャー法でストレスを与えられた発芽大豆から抽出されたグリセオリンの誘導体(※)の「再発性乳がん細胞の増殖阻害効果の評価」を行っていましたが、がん研究所の斉藤典子先生らは、再発性乳がん細胞(LTED)にグリセオリンⅠを含む抽出液を添加し培養することで、同がん細胞の増殖が抑制され細胞死に至ることを発見しNature姉妹紙のScientific Reportに発表しました。

LTED細胞は、女性ホルモンと似通った分子量で且つ特定の構造を持つ低分子化合物で細胞死に誘導されやすい脆弱な性質を持つことが示され、その分子メカニズムの一つが解明されました。このことからグリセオリンIは、乳がんのホルモン治療において抵抗性を持った再発乳がんの新しい治療薬としての可能性が期待されます。

※ダイゼインの誘導体
グリセオリンⅠ、グリセオリンⅡ、グリセオリンⅢ、グリセオリンⅣ、グリセオリンⅤ、グリセオリンⅥ、プレニルダイゼイン、プレニルゲニステイン、プレニルクメステロール

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Q

天然化合物の優位性を教えて頂けますか。

A

2000年頃からITを駆使したコンビナトリアル合成技術とロボット技術、スーパーコンピューターの進展により合成化合物ライブラリーを用いたハイスループットスクリーニングが全盛となりました。ジャーナルでは、新薬の開発にもはや東海岸の医学系や薬学系の人間は不要で、これから西海岸のシリコンバレーを中心に工学系の人間の時代が到来したとまで云われました。
しかし合成された化合物や誘導体の構造に多様性の限界があることが判明し、当初期待したような結果にはなりませんでした。

例えば下の図はタキソールというイチイの木由来のアルカロイド系の抗ガン剤で年間3,000億円以上の売上を誇っています。

タキソールの構造式

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非常に複雑でユニークな構造をもっていまして合成技術ではなかなか作製できるものではありません。
タキソールように多くの植物由来の薬がガンの治療の現場で活躍しているのです。

ところが、わたし達は植物の葉、根または茎から有用物質を抽出するのではなく、種子から無限と言っていいほどの<膨大な多様性を備えた新規天然化合物>を短時間に誘導して創りだす技術を大豆のモデルとして確立することに成功したのです。
この技術を発見者の名前に因んで<落合式ハイプレッシャー法>(特許番号5795676)と名付けました。(私の名前ですけど……(笑))

Q

最後に今後の目標をお聞かせください。

A

まずはイソフラボン(ダイゼイン)から得られた数千種のフィトアレキシンライブラリーの有効性について検討を加えていきたいと思っています。ヒストン修飾などエビゲノム分野にも効果が期待できるのではと思っています。
今後はフラボノイド以外にもテルペノイド、ステロイド、アルカロイド、脂質なども含めて大豆のフィトアレキシン類を網羅的に取得していきたいと思います。
大豆から薬が発見される日はそう遠くないと思います。

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